南山開発計画の現状

 昭和62年に南山全体に宅地開発計画が立てられ、現在、南山の約87ha(東京ドーム約19個分)で土地区画整理が計画され、開発による消滅の危機にあります。
 総事業費 約400億円、事業期間 約15年間(2005年~2020年)、2本の幹線道路(中央高速、東名高速をつなぐ)を作る計画です。  工事の内容としては、一部の樹林地(奥畑谷戸)を残して、約95%を切り土、盛土90%以上で造成し、戸建て住宅や商業施設などを作り、約7,600人の住む住宅地にする計画です。 公園緑地は14%確保する予定ですが、現状緑地は奥畑谷戸公園などを残し、あとは造成後に植樹するものです。

下の写真は開発のBefore&Afterですが、この開発によって失われる自然がでれくらいのものかが分かるかと思います。



 また、南山の貴重な里山を失う開発には、市税20億円、都税48億円という多額の税金が投入されることになっています。つまり、南山の問題は稲城市のみの問題では決してないのです。
 また東京都は、オリンピック招致のために、東京湾の埋立地に海の森を整備する計画を立てていますが、一方で、海の森と同じ規模の東京近郊最大の里山「南山」を破壊しようとしています。生物多様性の観点からもその価値を見直そうと里山保全に国としても力を入れている昨今に、こんな矛盾した政策が果たして通用するのでしょうか?

開発の問題点

現在この開発計画について、下記のような問題が指摘されています。
・緑に包まれた南山丘陵の緑の大半が失われる
・環境アセスメントの不備
・絶滅保護種に指定されているオオタカ、トウキョウサンショウウオをはじめ、多様な動植物のすみかが失われる。
・生物多様性、里山の重要性の認識がない
・税金を投入するのに採算性に疑問がある
・三井不動産や地主さんとの地権の問題がある
・工事の安全性に疑問
・幹線道路ができることで大気汚染が進む
・南山の貴重な遺跡が失われる

広がる開発反対の声

 多摩丘陵で未だに素晴らしい森、貴重な森(里山)が残る南山は、高畑 勲監督の「平成狸合戦ぽんぽこ」の舞台にもなったところです。
そんな森が全て切り開かれようとしている。。。しかも待ったなしの状態です。

 そんな状況の中、昨年(2008年)頃から急激に市民、都民の反対運動が大きくなり、2009年2月現在で 25,000筆もの反対署名が集まっています。
 ただ、市会議員の賛同はなかなか得られず、工事の差し止めまでには行っていないため、このままだと森が破壊されてしまう状態です。

 マスコミもこの問題を大きく取り上げていて、これまでに朝日新聞、毎日新聞、読売新聞、週間SPA、FRIDAYなどで記事にされました。また、テレビでは、「噂の!TBS 東京マガジン」、「スーパーモーニング」で特集されました。

 「平成狸合戦ぽんぽこ」の高畑勲監督も南山開発に対して反対の声をあげて頂き、シンポジウムも開催しました。(2009年5月)
 また、「木を植える男」Earthwalkerとしても有名なポール・コールマンさんは、南山を訪れ、120人もの市民と共に南山の自然を満喫され、開発反対運動に加わっています。

 地球温暖化、生物多様性の保護など自然環境問題は、よりグローバルな視点で考え、より長期的な視点で解決を計ることが求まれている時代にあって、この開発計画は愚考としか思えないものです。

inserted by FC2 system